若者の車離れが起きている原因って? 整備業界への影響は
「若者の車離れ」という言葉を数年前から目にするようになっていませんか。この言葉が物語る現象は、整備業界へも影響を与えています。若者の車離れの原因は何なのか、また、若者の車離れと整備士という仕事の関係についても解説します。
若者の車離れの原因とは
若者の車離れはなぜ起きているのか……断定はできないものの、その原因として考えられているのは次のような若者の現状や時代背景です。なお、ここでは若者を20代~30代の人と定義しています。
経済的理由
現在の若者にとって、車は「高すぎる買い物」となっています。2000年前後からの就職氷河期、非正規労働者の増大などによって、若年層の個人消費は低迷、高額消費をする若者の数は一時期に比べ格段に減っています。車自体の購入費用もさることながら、自動車税などの各種税金、自動車保険、車検費用、駐車場代などの維持費がかかることも、購入をためらう要因となっています。
趣味の多様化
実用性だけでなく、趣味として楽しむことができるのも車の魅力です。
しかし、今や若者の趣味は多種多様な広がりを見せており、車はその中の一つに過ぎなくなっています。特にインターネットの普及により、好きなことに関する情報を簡単に集められるようになったという時代の変化は大きいでしょう。また、趣味の幅が広がるにつれて、一つの趣味にのめり込むというよりは、興味分野を広げていろいろなことを楽しむ人が増えているとも言えそうです。
車を所有する価値の低下
かつては、車を所有することには「大人の証」や「車を持つ余裕がある人」と言ったステイタスが伴いました。しかし、今の若者には車に限らず、特定の物を持つことがステイタスであるという価値観に対して、同意する人は少ないようです。
車の利便性は認められているものの、実際には車の所有ではなく、レンタカーやカーシェアリングの方が安価に利用でき、コストパフォーマンスに優れているという考えに向かう傾向があります。
整備業界への影響
こうした若者の車離れは、整備業界へも影響を与えています。国土交通省のホームページに公開されている、「平成26年10月 自動車整備業を取り巻く現状と課題」と言う資料では、自動車整備関連の大学や専門学校への入学者数が、10年前と比べると半数以下に激減しています。これは少子化も関係していますが、それ以上に、若年層の中に「車をいじるのが好き」という人が少なくなっていることが要因の一つになっていると考えられます。
このため、整備業界では後継者不足、整備要員の高齢化が進んでいます。特に整備要員数2~3人の小さな認証専業者では、約3割が後継者問題で窮しているという状況に陥っています。また、整備要員の平均年齢は平成25年度には43.5歳に達し、対前年度も0.2歳増と上がっています。
しかし、世の中の整備自体に対する需要がなくなっているわけではありません。むしろ、今後はハイブリッド車や電気自動車、燃料電池自動車など次世代の車が普及していくと予想され、こうした新技術に対応できる若い整備士の確保は急務とされています。とりわけ自動車整備士という国家資格を持つ若者の存在は貴重で、その価値は上昇しています。
整備業界も、いかに若い整備士のモチベーションを維持・向上させるか、雇用と人材育成を促進させるかということに力を注いでいます。
若者の車離れが進行している現在ですが、将来的に登場するであろう次世代の車は、これまでの車とは異なる形で普及するかもしれません。それだけに、これから自動車整備士を目指す若者に対する期待には、大きなものがあります。少しでも車に興味があるという人は、整備士を職業にすることを選択肢のひとつとしてみてはいかがでしょうか。
参考資料:
国土交通省「自動車整備業を取り巻く現状と課題」