燃料電池自動車はどうやって動く? FCVの仕組み
エコカーと呼ばれる車の中でも、10年後、20年後に国内での普及が期待されている方式のひとつが、燃料電池自動車(FCV)です。なぜ、燃料電池自動車はエコカーとして期待されているのでしょうか。また、燃料電池自動車はどのようにして動くのでしょうか。その仕組みと、今後の普及に向けた動向について解説します。
燃料電池自動車(FCV)とは
燃料電池自動車(FCV)とは、水素と酸素を化学反応させることで発電し、それを動力源として走る車のことです。なお、FCVとは「Fuel Cell Vehicle」の略称です。
燃料電池自動車は、水素と酸素を使い、水蒸気のみが排出される仕組みを軸とするため、大気汚染につながる物質を排出しにくいという特徴があります。また、水素と酸素はどちらも地球上にありふれた元素であることから、環境にやさしく、化石燃料が枯渇したときにも対応できる車として期待されています。
燃料電池自動車(FCV)の仕組み
燃料電池自動車の仕組みは、現在大きく分けて2つあります。
一つは、車の中に水素を貯めるタンクが付けられているタイプで、これは外部の空気を車内に取り込み、燃料電池にあたる装置にタンク内の水素と外部から取り込んだ空気(酸素)を送り込み、化学反応によって発電し、駆動モーターを動かすというものです。タンクに貯める水素は、高圧圧縮したものと、液体水素としているものの2種類があります。
もう一つのタイプとしては、車の中に水素を吸蔵した特殊な合金が付けられ、これをメタノールやガソリンなどと合わせることで水素を取り出し(改質)、先ほどのタイプと同様のプロセスで駆動モーターを動かす仕組みがあります。
従来のガソリン車も、ガソリンを燃焼(爆発)させることでエネルギーを得てエンジンを動かしますが、燃料電池自動車はエンジンではなくモーターを回す点が異なります。
モーターを回すと言う意味では電気自動車(EV)と仕組みが似ていますが、電気自動車は蓄電池が用いられており、充電によって電力を溜めています。
これに対し、燃料電池自動車は水素や水素を取り出すための燃料を車体に充填して、車の中で発電を行います。また、電気自動車よりも1回の充填による航続距離が長いという違いもあります。
燃料電池自動車(FCV)の普及
現在、国内自動車メーカー各社は、燃料電池自動車の開発・普及に取り組んでいます。この取り組みは2002年から始まっており、世界に先駆けて燃料電池自動車がリース販売されています。
その後、2014年には世界初のセダン型燃料電池自動車が発売して話題となり、2016年にも、セダン型燃料電池自動車が発売されました。また、メーカー各社は国内だけではなく海外の自動車メーカーとも提携し、燃料電池自動車の共同開発を推進しています。
さらに、燃料電池自動車にとって大きな課題であった水素を充填するための水素ステーションの整備も徐々に進んでいます。ガソリン車がガソリンスタンドで燃料を補給するように、燃料電池自動車は水素ステーションで圧縮水素を充填させる必要がありますが、これを設置するにはコストなど、さまざまなハードルが存在していました。燃料電池自動車がさらに普及するには、この水素ステーションというインフラ整備を行うことが不可欠です。
商用の水素ステーションは2017年1月現在、茨城、埼玉、千葉、東京、神奈川、山梨、岐阜、静岡、愛知、三重、滋賀、京都、大阪、兵庫、山口、徳島、福岡、佐賀、大分の各県に、80ヶ所近くが設置され、営業しています。
しかし、燃料電池自動車が普及するには、まだまだ少ない状況です。
燃料電池自動車は自動車メーカーだけでなく、政府も積極的な取り組みを見せています。
たとえば、経済産業省は2014年6月に「水素・燃料電池戦略ロードマップ」を策定、2016年3月22日にはその改訂版を作成しました。改訂版によれば、燃料電池自動車の普及台数目標は、2020年時点から始まり、2030年までには80万台程度の普及を目標としています。
水素ステーションについては、2020年度までに320ヵ所程度の増加と、これまでの4倍の設置数を目標としています。これは、2030年時点で目標としている80万台程度の燃料電池自動車を問題なく運用するには、標準的な設備の水素ステーション換算では900基程度が必要と考えられているためです。水素ステーション1ヵ所単位で計算すると、1ヵ所につき、2~3基の設備が備わっている状態と言えます。
このように、燃料電池自動車は注目を集めている技術ではありますが、その普及活動は官民ともに始まったところと言えます。今後、燃料電池自動車が車の主流となるかは未知数ですが、その仕組みと動向を知り、次世代の技術として知ることは必要でしょう。
参考資料:
経済産業省「水素・燃料電池ロードマップ[改訂版]」